【用語解説】日韓では不要? 通貨スワップ協定(通貨交換協定)とは

経済用語
【Glossary】 Unnecessary in Japan and Korea? What is the currency swap agreement (currency exchange agreement)? 経済用語

通貨スワップ(通貨交換)という言葉は、なかなか取っ付きにくいところもあるかと思うのですが、出来るだけ平易な言葉で説明を試みます。

まず、「通貨スワップ」という金融用語について説明します。為替予約との違いについても書いてみました。

次に、国家間の「通貨スワップ協定(通貨交換協定)」について説明します。また、なぜ世界で必要とされているのかを概観します。

最後に日韓通貨スワップ協定について、その歴史と必要性について考えてみます。

通貨スワップ

一般に通貨スワップとは…

通貨スワップとは、異なる通貨の受取りと支払いを交換する取引のことです。

具体的に説明しますと、例えば、ある日本企業が、日本国内だけではなく、海外での資金調達も検討しているとします。

例として、社債の発行において、円建て債券の他に、米ドル建ての債券(外債)の発行を考えているとします。

米ドル建て外債の場合、一般には、下記の三つのお金の流れが生まれます。

  1. 発行時に、米ドルを受取る(これが調達)
  2. 将来、米ドルで利息を支払う
  3. 最後に、米ドルで元本を償還する

日本企業としては、為替リスクを回避したくなります。そこで、スワップ市場で通貨スワップ契約を結ぶとします。

日本企業が「スワップ相手」と結んでおく契約は、

  1. 発行時に、調達した米ドルを渡してしまい、代わりに円を受取る。
  2. 将来、必要となる利息分の米ドルを受取り、その分の円を渡す。
  3. 最後に、必要となる元本分の米ドルを受取り、その分の円を渡す。

こういった契約を、スワップレートと呼ばれる交換為替レートで、日本企業とスワップ相手が、最初に全部結んでしまうわけです。最初に全部というところがポイントです。

そうすると、日本企業は海外での資金調達でありながら、発行時に全部円建てで受け渡しの額を決定できます。

つまり、国内で調達するのと、海外で調達するのと、どちらが有利なのか、為替リスク無しに決めることが出来ることになります。

為替予約との違い

従来より、為替リスクを回避する方法として用いられてきたのが、為替予約です。為替予約と通貨スワップはどう違うのでしょうか。

為替予約の場合、一般に一年後、二年後、とそのタイミングによって予約レートが変わります

先ほどの例で言えば、毎年の米ドル支払利息が一定だったとしても、円ベースでは、予約レートによって毎年変化することになります。これでは、国内発行と単純に比較出来ません。

通貨スワップを利用する場合、毎年の支払利息が円ベースで均一になるようなスワップレートを金融機関に用意させて契約を結びます。

こうすることで、国内で債券を発行するのと全く同じ土俵で比較できることになります。、

どちらも、事前に交換為替レートを決めるという点では変わらないのですが、資金調達のグローバル化に伴い、より便利に為替リスクを回避する取引として登場したのが、通貨スワップでした。

通貨スワップ協定

一般に通貨スワップ協定とは…

通貨スワップ(通貨交換)協定とは、国や地域が、緊急時に協定相手国から外貨の供給を受けられるようにする約定のことです。

こちらも具体的に考えます。例えば、ある国が経済危機に陥り、通貨価値が急落したとします。

この国の中央銀行は、大量に自国の通貨を為替市場で買うことで、その下落を止めなければ、経済は混乱するばかりです。

しかし、自国の通貨を大量に買うためには、外貨を大量に持っていなければなりません。(この量を外貨準備高といいます。)

外貨準備高が不十分な場合、自国の通貨を買い支えきれないかもしれません。また、その不足を狙った国際的な金融取引が、自国の経済を混乱させるかもしれません。

そこで、あらかじめ通貨スワップ協定を結び、緊急時に中央銀行同士で一定額まで通貨を融通できるようにしておくのです。

なぜ必要なのか

資金調達でも資金運用でも、グローバル化が進むことは、企業の財務戦略の幅を広げることになります。

しかし、グローバル化すればするほど、地球規模で動く巨大な流動性資金が、弱い通貨を狙い撃ちすることが可能になります。

この時、通貨の番人である中央銀行が支えきれないと通貨危機が発生します。

後に詳述しますが、通貨危機というのは、発生した国だけが、被害を被るわけではありません

国際経済は、貿易以外にも、互いに店舗・工場を持っていたり、資金調達を行ったりしているわけですから、急激な通貨価値の変動は大きなリスクです。

そこで、あらかじめ他国の中央銀行と手を組んで、防衛ラインを敷いておく、というのが通貨スワップ協定です。

日韓通貨スワップ(通貨交換)協定

2001年7月◆締結

1997年のアジア通貨危機を経て、日中韓三カ国とASEAN諸国は、外貨不足の国を協力して支える他国間協定(チェンマイ・イニシアティブ)を結んでいました。

その後、日本は、ASEAN諸国との協定をより機動的なものにするべく、内容を拡充しています。

一方、日韓は、2001年に通貨スワップ協定を締結。その金額は徐々に大きなものになり、一時最大700億ドル(約8兆円)というレベルまで達していました。

2015年2月◆終了

2015年2月、日韓通貨スワップ協定は期間満了をもって終了しました。

その理由として、まず、過去の金融危機の時と比べて、韓国の外貨準備高が増えていることが挙げられます。

アジア通貨危機の際には、ドル不足を痛感した韓国でしたが、現在では当時と比較にならない外貨準備を保有しています。

もう一つは、日韓関係の悪化です。韓国の李明博(イミョンバク)大統領(当時)の竹島上陸は、大きなインパクトを残しました。

日本政府の「韓国政府の要請がない限り、延長はしない」とする発表に対し、韓国側では「経済の政治利用だ」と反発する声があがりました。

しかし、こういった背景が世間に広く伝わっていたにもかかわらず市場に大きな動きはみられませんでした。

つまり、通貨スワップ協定が完全に終了しても、影響は軽微であろうという予測が立っていたことも事実です。

2016年8月◆再開協議開始で合意

ソウルで開かれた日韓財務対話で、韓国側から、通貨スワップ協定再開に向けた協議開始の要請がありました。

中国の経済成長が鈍化していることや、米国の金利引き上げなどが背景にあると考えられます。

当然、韓国側のメリットが大きいのですが、日本側も地域経済の安定のためにと、合意しました。

2017年1月◆協議中断

日韓関係の冷え込みから、再開へ向けた協議が中断することになりました。

麻生財務相は記者会見で「信頼関係を作った上でやらないと安定したものにならない」と話し、両国間の信頼関係が必要との認識を示しました。

もともと韓国にメリットが大きい

もともと、韓国にメリットが大きい協定です。

先述の通り、過去の世界的な金融危機の時に比べ、韓国は飛躍的に外貨準備高を増やしました。しかし、日米英、そしてユーロ圏と、巨大通貨が金融緩和を行うと、結果的に韓国ウォンを高くする力が働きます。

韓国経済は輸出産業のウェイトが非常に大きいので、ウォン高は深刻な脅威となります。

様々な考え方が可能です。大国が自国の経済状態の悪化から、新興国のことを気にしていられなくなったのだ、とも言えます。逆に、新興国はもう十分に経済大国であり、むしろ世界経済を一部支えるべきなのだ、とも考えられます。

韓国はもう新興国というレベルではありませんが、完全に自立出来るほど経済規模が大きいとも言えません

中国や米国との協定関係は継続しているわけですが、既に両大国の綱引きに巻き込まれているという指摘もあります。日本との関係は、決して軽いものではありません。

日本のメリットとは

日本が、韓国、インド、ASEAN諸国など自国より外貨準備高が少ない国と、通貨スワップ協定を結ぶ経済的なメリットは、貿易と現地生産の安定化です。

特にアジアの場合、膨大な数の日本企業が進出していますので、他国の金融危機でも予防したいと考えるのです。

また、日本側の政治的なメリットは、特に今すぐ何かをしなくても、「お互い危機を未然に防ぎましょう」と友好関係を高める外交が出来るということでした。

しかし、今は、そんな手が通用しないレベルまで、日韓関係が冷え込んだということでしょう。

日韓通貨スワップ協定は、「必要なし」という結論に、現在は達しています。しかし、一枚カードが宙に浮いている状態とも言えます。

米国、欧州、中国という三つの巨大経済パワーの動きをみながら、カードの行方に注目していたいと存じます。

終/【用語解説】日韓では不要? 通貨スワップ協定(通貨交換協定)とは

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