【用語解説】ポスト真実とは? 背景と関連ワードから掘り下げてみました

政治用語
What is the post truth? I tried to dig in from the background and related words 政治用語

「ポスト真実(post-truth)」というワードが普通に使われるようになって、3年目に入っています。

直訳すれば、「真実の次」とか「脱真実」ということになりますが、英国のEU離脱を決めた国民投票や、トランプ氏の大統領選などを思い浮かべるのが一番分かりやすいかもしれません。

重大な政治決定において「客観的事実の重要性が下がり始めている」と懸念されているのです。

「ポスト真実」の意味を掘り下げ、その背景と関連ワードから、今の時代をどう生き抜いていくかを考えてみたいと思います。

意味

『客観的事実より、感情や個人的信条へのアピールが世論の形成に影響力をもつ状況』(オックスフォード英語辞典)

世界最大の英語辞典であるオックスフォード英語辞典が、2016年の「今年の言葉」に選んだのが、この「ポスト真実(post-truth)」でした。

いろんな意味合いで使われ始めていますが、特徴として次のようなものを挙げたいと思います。

  • 真実かどうかは二の次で、機能することが重要だと考える
  • 客観より主観。全体の事実より個人の事実。
  • 「感情」を重視する傾向
  • 宗教、文化などに訴えかける「アイデンティティーの政治」が背後に

実は、こういった価値観や弁論術そのものは、なにも新しいものではありません。しかし、偏った事実どころか嘘で人を動かそうものなら、世間から叩かれるのは当たり前でした。

ところが、現代世界政治の重大決定が、「ポスト真実」で成立してきたことから、このワードが表舞台に出てきました。

背景

「ポスト真実(post-truth)」というワードを話題にしたのは、やはり二つの政治ニュース、英国が国民投票でEU離脱を決めたことと、米国大統領選でトランプ氏が勝利したことです。

英国で国民投票のさなか、「我が国はEUに毎週3億5000万ポンド(約476億円)拠出している」という嘘がまことしやかに流れていました。

米国大統領選では、「オバマ大統領が過激派組織『イスラム国(IS)』をつくった」とネット上で流れていました。

真実を明らかにしやすいはずの情報化社会において、嘘が重大決定に影響を与える。その「感触」に米英の国民自身が、非常に不気味なものを覚えたのだと思われます。

自分たちの行動をまるで戒めるかのように、「ポスト真実」というワードが浮上してきました。

ワード

「ポスト真実」と共に話題となってきたワードを整理してみます。

フェイクニュース(偽ニュース)

このワードは非常に分かりやすいです。インターネットの匿名性と、ソーシャルメディアの影響力を考えれば、何かの目的の為、意図的に嘘のニュースを流す組織・人間がいることは簡単に予想出来ます。

問題はそのフェイクニュースが力を持ち始めていることです。逆に言えば、情報化社会が真実を埋没させるという逆説的なことが、一部で起こり始めていると言えます。

オルタナ・ファクト(もう一つの事実)

トランプ大統領がCNNなど大手メディアを「フェイクニュース」と罵った時、自分の主張を「オルタナ・ファクト(もう一つの事実)」という新造語で正当化しました。

もともと大手メディアが拾う「全体の事実」と、SNSで発信される「個人の事実」という構図があります。両方の「事実」から「真実」を探ることを我々はやってきました。

しかし、大手メディアを「フェイクニュース」とたたっ斬るトランプ氏がアメリカの大統領をやっています。客観より主観。「ポスト真実」というワードも飛び出てくるわけです。

ファクトチェック(事実検証)

政治的権力を持つものの発言や、選挙戦さなかに流れた情報の、真偽を明らかにしようという動きがファクトチェックです。

ファクトチェック運動は、ポスト真実の時代においては非常に重要な意味を持つと思われますが、十分に盛り上がっているようにも見えません。

理由として考えられるのは、次々と新しい事実や情報が流れこんできて消化しきれていないこと、ファクトが耳に心地よいとは限らないこと。また、「それは個人としては事実だった」と主張されたら、その真偽を検証することは難しいことが多いこと、などなど。そこで次のワードも重要なものとされてきました。

スローニュース

ヘッドライン(見出し)だけのニュースというものが流れています。しかし背景・歴史を掘り下げて解説しているものを見ると、ある程度偽の情報を見抜くことが出来ます。

こういったニュースが「スローニュース」ですが、落ち着いて読めば、ブレグジットのように判断してから後悔するということも減らせる。この考えは、情報化社会を生きていく智慧かも知れません。

まとめ:アイデンティティーとインターネット

昔、途上国のある街でやたらとインターネットに詳しい少年に出会いました。しかし、彼はテレビというものを知らなかった。テレビ放送が無い国や地域でも、インターネットは使える時代です。

インターネットでは、個人が主観で情報を発信します。これが当たり前になってきた時、主観でモノを言う政治家に親近感がわくようになることは、予想出来たのかもしれません。

一方、我々はテレビもインターネットも知っています。客観的事実も主観的事実も両方見て、冷静に真実を探っていかなくてはなりません。ところが、「ポスト真実」と言われるようになってきたのはなぜでしょうか。

一つは情報の洪水の中をうまく泳げていないのだと思われます。フェイクニュースが飛び交うばかりか、事実報道を「フェイクニュースだ!」と言われて、一瞬立ち止まってしまいます。

二つ目はアイデンティティーの時代です。文化や宗教で人間を区切り、その溝が世界的に深まっている時代にあります。各グループにとって心地よい事実は、それが偏ったものや時に嘘であっても、人々を惹きつけます。

客観的事実や背景の理解というものを大事にしなければ、誰かにうまく利用されてしまいます。そして「後悔」という言葉が待っている。ブレグジットという言葉は歴史に残ると思いますが、ファクトチェックやスローニュースも耳に入れながら、後悔しない選択をしていきたいものです。

終/ 【用語解説】ポスト真実とは? 背景と関連ワードから掘り下げてみました

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