平昌オリンピックの影、問題となった5つのポイント

韓国
Shadow of the Pyeongchang Olympic Games, five points that became a problem 韓国

2018年、平昌オリンピックが華やかに開催されました。

多くの選手が、胸を熱くする活躍をしていましたが、一方で、政治、経済面から「オリンピックの影」とでも言うべき点が垣間見えていました。

南北融和アピール、大会委員長の辞任、ボランティアの離脱、ドーピング問題、設備投資問題と、5つのポイントから概観してゆきます。

南北統一チーム

韓国・文在寅(ムンジェイン)大統領の提案

平昌オリンピックへの参加を、北朝鮮がまだ表明していない時、韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領が次のようなことを言い出しました。

「初めて南北で一つのチームをつくり最高の成績を収めた1991年の世界卓球選手権やサッカーの世界ユース選手権の栄光をもう一度見たい」

1988年のソウルオリンピックの際、北朝鮮は不参加でした。今回は参加を促す意味でも、南北統一チームをつくり、「南北融和」を世界にアピールしようとのことでした。

しかし、アピールはともかく、現実に南北融和が進んでいるとは言えません。

上記のスピーチの後、文大統領は、北朝鮮全域を射程におさめる弾道ミサイルの試験発射に立ち会っています。この時、「対話は強い国防力があるときに可能になる」との談話を発表しています。

スポーツ選手と政治的アピール

結局、南北融和を合言葉に「平壌五輪」と皮肉られたオリンピックが始まりました。開会式での合同行進や聖火リレーも含め、南北融和の演出があちこちに組み込まれました。

困らされたのは、スポーツ選手です。女子アイスホッケーの韓国チームは、強豪国カナダから来たサラ・マリー監督の下、勝利に向けて強化態勢をとってきました。しかし、突然、オリンピック開幕直前に、政治判断で北朝鮮の選手との合同チームになることが決まったのです。

オリンピックが政治の干渉を受ける時、割を食うのは、常にスポーツ選手です。今回も見た目の華やかさとは違う苦味が残る大会に成りました。

大会委員長の辞任

趙亮鎬(チョ・ヤンホ)氏

趙亮鎬(チョ・ヤンホ)氏が、平昌オリンピック・パラリンピック組織委員会の委員長を務めていました。この人は、韓国の財閥・韓進(ハンジン)グループの会長です。

実は、その就任前、2014年7月に前任の委員長と事務総長が、立て続けに辞任しています。同組織委員会が、韓国監査院の検査を受けている最中のことでした。後任として抜擢されたのが、韓進グループの会長です。

ナッツリターン事件

ところが、また事件が起こります。この韓進グループは、韓国の物流に陸海空の全てで関わっているのですが、その空の部分が大韓航空です。いわゆる「ナッツリターン事件」で訴訟になっている趙顕娥(チョ・ヒョナ)前副社長は、この趙亮鎬委員長の娘です。

委員長就任当初、まさか自分が「ナッツ姫の父」として有名になるとは考えてなかったと思います。

趙亮鎬委員長辞任

2016年5月3日、平昌冬季五輪の大会組織委員会は、趙亮鎬会長の辞任を発表しました。

韓進グループ傘下の韓進海運が経営難となり、同会長はその経営立て直しに専念せざるを得なくなったのです

世界的な海運不況の中で、その累積債務に対し、オーナー一族の責任が問われる形となりました。

韓国と財閥というテーマは、これからも随所に登場しそうです。

ボランティアが離脱

約2万人でスタート

平昌オリンピックのボランティアは、パラリンピックを含めると145カ国・地域から9万人以上の申し込みがあり、約2万人が選ばれました。

しかし、劣悪な生活環境に不満を訴えるなどして約一割(2000人)が開幕前に辞めたと、大会組織委員会が発表しました

離脱の理由

一割もの人が離脱した理由は何でしょうか。

大会準備中、ボランティア向けの宿泊施設があったそうですが、温水が出ずに、冷水で体を洗うことがあったようです。

あるいは、洗濯機があまりに少なく、夜遅くまで順番待ちなどしなければいけなかったようです。

非常に初歩的なことかと思いますが、ボランティア参加者を「多数」受け付ける場合、それなりの準備が必要です。

東京オリンピックはおそらく暑さがテーマになります。ボランティアの人たちは、準備さえあれば自分で対処しますが、さすがに人数分最低限の設備がないと離脱してしまいます。

ドーピング問題

ソチオリンピック

2014年のソチ五輪において、ロシアにドーピングによる「組織的な不正」があったと、国際オリンピック委員会(IOC)は結論づけています

ロシアは同オリンピックで、国別1位の金13個を含む33個のメダルを獲得しましたが、IOCによる検体再検査で25人の違反が発覚しました。

結果、金4、銀6、銅1のメダル剥奪が決まっています。

平昌オリンピック

IOCは、国家ぐるみのドーピング問題を抱えるロシア・オリンピック委員会(ROC)を資格停止とし、平昌五輪への選手団派遣を禁じることを決めました。

ただし、潔白が証明された選手はチーム競技も含めて「ロシアからの五輪選手(OAR)」として参加する道を開きました。しかし、国旗や国歌の使用は認めないとし、ロシアから大きな反発がでました。

そり系競技(ボブスレー、リュージュ、スケルトン)

競技人口の大きな差

個人的には、そり系競技のように、競技人口が少ないスポーツで頑張る選手をみると、ついつい応援したくなります。しかし、オリンピックの会場建設という話になると、個人的というより、国民やその地方、みんなの問題となります。国債や地方債の償還という問題が、将来のスポーツ振興や社会福祉の足を引っ張る可能性が出てくるからです。

オリンピックの各競技種目は、その競技人口に大きな差があります。スキーのようなメジャースポーツだと、大会後もリゾート地として使える場合もありますが、前回行われたソチオリンピックは、その会場の多くが大会後ほとんど使われず、地元では頭の痛い問題となっています。

特にそり系競技というのは競技人口が少なく、オリンピックで使える会場は、世界中で数えるほどしかありません。アジアでは、長野に100億円以上かけて作った「スパイラル」だけでした。施設の数が少ないということは、建設費用が非常に高額である上、日頃の利用収入と維持費が釣り合っていないことを意味します

長野でも、スケートリンクなどは、黒字経営が出来ているということですから、競技によって財政負担に大きな差が出る。そこで、次のような提案が登場しました。

IOC(国際オリンピック委員会)、一部国外開催を提案

2014年12月8日、IOC(国際オリンピック委員会)は、そのオリンピック改革案の中で、一部競技の国外開催を認めることを決めました。

韓国で財政難から会場建設が遅れていたことと、日本に「スパイラル」があることをにらんでのことでした。これに対し、日本オリンピック委員会は、もし話があれば検討すると発表します。

韓国・朴槿恵(パククネ)大統領、提案を一蹴

2014年12月12日、趙亮鎬(チョ・ヤンホ)委員長(当時)は、既に全ての競技場の工事が始まっているため、IOC(国際オリンピック委員会)の提案を受入れることは難しいとコメントします。

2014年12月15日、朴槿恵(パククネ)大統領(当時)は、分割開催の議論は意味がないと、IOCの提案を一蹴します。理由としては、悲願の誘致であったことと、既に競技場の工事が進行中であることが挙げられました。

2015年1月16日、IOC(国際オリンピック委員会)のリンドバーグ調整委員長は、平昌オリンピックを分割開催しないと明言しました。訪韓の上、強い信頼感を持つに至ったと語っています。

しかし、2022年冬季五輪の招致は、巨額の経費を不安視した欧州勢が諦めました。結局、開催都市に決まった北京とアルマトイ(カザフスタン)しか残らなかったのです。冬季五輪の未来には、この設備投資の問題が今後もつきまといそうです。

まとめ

平昌五輪から、オリンピックに垣間見える影の部分を拾ってみました。

理想的なオリンピックというのを考えてみますと、まず政治の介入を受けないということ、次に、経済で過度の財政負担が後世に悪影響を残さないということが思い浮かびます。しかし、現実はなかなか理想通りには行われていません。

政治に関しては、最初にモスクワオリンピックの参加ボイコット事件や、ミュンヘンオリンピックのテロ事件が思い浮かびますが、今回は逆の意味で政治的なアピールに使われていました。オリンピックは「平和の祭典」ですから、今回の南北統一チームはそれに沿ったもののように見えるのですが、実際に南北の融和が進んでいる気配はありません。急にチーム編成を変えられて、割を食うのはスポーツ選手です。

次に、経済面の問題をクリアしていくためには、オリンピックの後が大切になります。巨額の税金を投じてオリンピックの為に建てられた会場が、後にお客さんを集められなければ、結局、後世のスポーツ振興の負担になっていくのです。ツケが国民、特に地方財政に周ってくることがあります。ソチオリンピックの会場後が閑散としているのを見ますと、今回韓国で地元の反対デモが起っていたのも分からなくはありません。

その他、ドーピングの問題で冷やっとする場面がありました。ロシア人選手に対してIOCが国歌・国旗の使用を禁じたのです。国ぐるみと認定されたドーピング問題から、今後も目が離せません。

ボランティアの離脱もショックなニュースでした。大人数ボランティアを甘く見てはいけません。それなりの設備が必要です。冷水シャワーでは離脱も頷けます。もちろん途中で改善はされたそうですが・・・

オリンピックには強く明るい光があります。当然影の部分もあるわけですが、今後も政治経済面からその様子に注目していたいと思います。

終/平昌オリンピックの影、問題となった5つのポイント

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