弱体化? G20の成立ちと近年の動向を時系列で分析

G20
Weakened? Time series analyzes of the formation of G20 and recent trends G20

G20(Group of Twenty)とは、世界的な経済・金融問題を協議する国際会議、ならびにその参加20カ国・地域のことです。

もともと、20カ国財務相・中央銀行総裁会議をG20と呼んでいました。しかし、後に各国のトップが集まる、G20首脳会議が加わり、より存在感を増すことになりました。

2019年6月、初めて日本が議長国になります。場所は大阪。責任は重大です。

G20の成り立ちと、ここ数年の動きを時系列形式でまとめてみました。

G20首脳会議が誕生するまで

G5からG20まで参加国は下記の通りです。

G5~G20参加国・地域
国名G5G7G8G20
日本
アメリカ
イギリス
フランス
ドイツ
イタリア
カナダ
ロシア
中国
インド
韓国
インドネシア
オーストラリア
サウジアラビア
南アフリカ
トルコ
メキシコ
ブラジル
アルゼンチン
EU(欧州連合)

G5

冷戦の時代、西側の先進5カ国(日本、アメリカ、イギリス、フランス、西ドイツ(当時))で、財務相、中央銀行総裁会議が行われ、「G5」と呼ばれていました。

1985年、米ドル危機を回避するためプラザ合意を発表したのが、このG5です。日本は急激な円高ドル安時代からバブル経済に突入するわけですが、これ以降、先進国が協議の上、世界経済に協調して介入するというスタイルが、一般化することになりました。

G7

G5にカナダ、イタリアが加わり、「G7」が誕生します。別名、先進七カ国会議です。

EU(欧州連合)がここに加わり、現在では、7カ国+1地域で、「G7」と呼ばれています

G8

冷戦が終結するに伴い、G7にロシアが加わるようになりました。「G8」と呼ばれます。

ちなみに、ロシアは一気に全ての会議に参加していたわけではなく、1990年代から2000年代にかけて、少しずつ参加会議を増やしてきました。ところが、ウクライナ問題のようなことが起こると、「G8がG7に逆戻り」するなどと言われて、問題視されてもきました。

G20

1999年、G8の8カ国+EU(欧州連合)に、新興の11カ国(中国、インド、韓国、インドネシア、オーストラリア、サウジアラビア、南アフリカ、トルコ、メキシコ、ブラジル、アルゼンチン)を加えて、「G20」が誕生しました。

きっかけは、1997年のアジア通貨危機でした。経済のグローバル化が進む中で、先進国と新興国が協力して世界経済危機に対応する枠組みが必要だと考えられるようになりました。

経済規模の大きい20カ国が集まることで、その域内生産量を合計すると、世界経済の8割以上を占めるグループが出来上がりました。また、これら20カ国で世界人口の三分の二を占めます。G8から規模が飛躍的に大きくなりました。

G20首脳会議(金融サミット)

2008年に発生したリーマン・ショックの後、世界的な金融危機に対応するため、G20首脳会議(金融サミット)が開催されました。その後、このサミットが定例化して、「G8に変わる枠組み」として認識されることが増えてきました。

現在、G20(20カ国財務相・中央銀行総裁会議)が年三回、G20首脳会議が年一回開催される状態となっています。

G20首脳会議、近年の動き

2015年: トルコ開催

同年、G20開催前に、アンカラの連続自爆テロ、パリの同時多発テロという、2つの大きなテロ事件が起こっていました。

首脳らは「全人類に対する許すことの出来ない侮辱である」と非難しました。

テロはいかなる状況でも正当化され得ないとし、テロ撲滅のために資金源を遮断するなど盛り込んだ、テロ対策特別声明を採択しました。

情報交換、テロリストに対する資産凍結へのさらなる協力、テロ資金供与の犯罪化などで、各国足並みをそろえていくとしました。

また、テロについては、「いかなる宗教、国籍、文明、民族集団とも関係づけられ得ない」ことも確認しました。

世界に膨大な人口を有するイスラム教徒の中で、過激派はそのごく一部にすぎません。テロとイスラム教を一般的なものとして結びつけることを、きっぱりと否定する内容を、このトルコ開催のG20で盛り込んだ形となりました。

なお、イスラム過激派組織、IS(イスラム国)への外国人戦闘員の流入が懸念されており、国境管理などの強化もおりこんだ内容となりました。

2016年: 中国開催

始まる前から中国の鼻息が荒かったのを覚えています。

この年最大の国家イベントと位置づける習近平(シーチンピン)国家主席からすれば、国際社会に指導力を示す絶好の機会でありました。

人口約900万人の杭州市で開催されたのですが、中国当局は、巨費を投じて会場を整備します。

また、政府機関や学校などを1週間臨時休暇としつつ、周辺観光地の入場料を無料にし、杭州市民には街から離れるよう促します。

期間中、中心部は人影がまばらで、夜になってもマンションのほとんどは明かりがともっていなかったといいます。

なお、この時、安全保障上の問題で、中国は日米韓などとの関係が険悪化していました。一つは、南シナ海問題。もう一つは、在韓米軍への高高度迎撃ミサイルシステム(THAAD)の配備問題です。

習近平国家主席は、G20開幕直前にロシアのプーチン大統領と会談します。

習近平氏は、「ロシアと中国のような高い水準の信頼関係が日本との間でもできれば、(領土問題で)妥協策を見つけられるだろう」と語り、牽制をかけます。

プーチン氏は、中国との関係について、「私たちの協力関係は順調に発展している」と述べ、G20で全面的に協力する方針を伝えました。

中国とロシアがTHAADの配備問題で、足並みをそろえていました。

一方、本来の趣旨である経済面での協力については、

・世界経済は上向きではあるが、リスクを内包しており、持続可能な成長のため、構造改革や財政政策を組み合わせながら、活用していく。
・過剰生産問題を話し合う対話の場をもうける。
多角的貿易体制のために、保護主義には反対する。
環境問題について、パリ協定の発効に協力する。

中国でのG20ではこのように採択されましたが、今後、下の二つがトランプ政権のアメリカによって大きく揺さぶられます。

2017年: ドイツ開催

大きなテーマは、反保護主義と環境問題に関して、アメリカが、他国と足並みがそろえられるかということでした。

結論から言いますと、反保護主義に関しては、弱められ、環境問題については、きっぱりと米国抜きでパリ協定を進めることになりました。

反保護主義に関して、昨年は、「あらゆる形態の保護主義に反対」という表現がなされたのに対し、この年は、「あらゆる不公正な貿易慣行を含む保護主義と闘い続ける」と一歩後退。米国第一主義で報復関税を目論むトランプ大統領に配慮した形となりました。

環境問題では、G20全体で温室効果ガスの削減などに取り組むことは明記しましたが、地球温暖化対策の国際的枠組みであります「パリ協定」に関しては、米国以外の19カ国が結束してに取り組むことが明記されました。

19カ国 vs トランプアメリカという構図になりましたが、議長国のメルケル首相は、米国と我々で意見が違うことを、はっきりさせられて良かったと述べました。

2018年: アルゼンチン開催

米中2大国の、貿易・安全保障両面での衝突が世界の大きなテーマとなっています。

対米関係の悪化が、国内の経済情勢を悪くしていくことに、中国は気付いています。そこで米国との間でディール(取引)が行われるのですが、これが、G20に影を落とします。

これまで、反保護主義を推進しながら、世界経済の持続的な成長を目指してきたG20から、ついに「反保護主義」の文言が消えました。まるで両大国の二国間協議に配慮したような会議となりました。

かつて世界の大国は、自国の経済を優先する保護主義をつきつめながら、世界大戦に突入していきました。その教訓をもとに、保護主義に対抗することが、このG20の大きな旗印だったのです。

しかし、自由貿易は各国に富を生み出す一方、国内の経済格差、貧富格差を生むことがあります。これを是正出来なければ、国民の中に深い不満が生まれます。

この不満が選挙で爆発し誕生したトランプ米政権が、G20に牙をむく形となりました。

議長国アルゼンチンのマクリ大統領は、「反保護主義」の文言を削除したことについて、「米国は保護主義とレッテルを貼られることは受け入れないと思う」と述べただけで、明確な理由を示すことはできませんでした。

まとめ

主要国が、経済問題について、みんなで話し合い、方針をきめる。その主要国というのが、西側諸国+ロシア+新興諸国でG20となっていきました。

G20の根幹にあるものの一つが、金融政策の協調です。アジア通貨危機やリーマン・ショックといったものへの対応は、旧来の先進国だけでは力不足で、新興国を合わせ世界全体で歩調をそろえる必要があります。

根幹にあるもう一つは、反保護主義でした。保護主義が軍事衝突・世界大戦につながってきた歴史から、多角的貿易体制と世界の経済成長を結びつけることを考えてきたわけですが、今、トランプ米政権をはじめとする自国優先主義の中で大きく揺さぶられています。

揺れているもう一つのテーマは、環境問題です。せっかく「パリ協定」というものがありながら、アメリカは孤立してでも自国の立場を譲ろうとはしません。

G20は無力なのか?といったことまで一部ではいわれているようですが、これだけ世界の首脳が集まることは、他にありません。

参加国を全て足し算すると、世界人口の約3分の2、世界GDPの約85%を占める巨大な存在です。

今後も国境を超えて解決すべき問題は、次々起こると考えられます。各国首脳が顔と顔を合わせる重要性が縮小していくとは思えません。

また、近年の動向をみても、議長国によってG20に個性が出ます。次の議長国である日本には多くの役割が求められますが、その一番は、G20の存在価値を改めて示すことかもしれません。

終/弱体化? G20の成立ちと近年の動向を時系列で分析

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