【用語解説】GDP(国内総生産)が国際経済で誤解される4つのポイント。それって、含む?含まない?

経済用語
【Glossary】 Four points where GDP (Gross Domestic Product) is misunderstood in the international economy. Does it include it? Not included? 経済用語

GDPという用語は、その国の経済規模を表す指標として、頻繁に登場します。しかし、そのまま「経済の大きさ」と単純に考えて良いのでしょうか。

このページでは、国際経済で誤解しやすいポイントを4点(海外生産、市場価格、人口移動、環境問題)から考えてみたいと思います。

4(諸)国(日本、北欧、ルクセンブルク、中国)の事例とあわせながら説明しますので、お読みいただければ幸いです。

海外生産は含まれない。しかし…

一番簡単、しかし重要なのは、この海外生産です。

GDPは「国内」総生産です。当たり前のことですが、輸出された分は「自国のGDP」に含まれ、海外生産された分は「海外生産拠点を置いている国のGDP」に含まれるのが原則です。

つまり、日本メーカーが生産拠点を海外に移せば、その分、日本のGDPは減り、移した国のGDPが増えます。日本ブランドの強さが、GDPに直結しているわけではありません。

例として、日本の車産業(輸送機器製造業)の場合を見てみます。

JAMA – 一般社団法人日本自動車工業会 (参照 2015/01/20)によれば、2012年の輸出台数は、四輪車が約480万台、二輪車が約48万台です。これらは、日本のGDPに含まれます。

一方、日本メーカーの海外生産台数は、約1,582万台です。こちらは他国のGDPに含まれます。こちらの方がずっと大きいのです。

ちなみにこの海外生産分のうち、約53.7%がアジアで、約26.9%が北米で製造されていますので、それぞれの地域でGDPを増やしていることになります。

なお、こういった製造業のグローバル化は、先進国ではむしろ一般的です。例えば、ヨーロピアンブランドの強さと、ヨーロッパ各国のGDPを直結して考えてはいけません。

もともと、被雇用者の所得を考えてのGDPですが、海外では選挙の争点などで、頻繁に外資の動きが注目されています。

これだけ海外生産が当たり前になり、国際的な大企業の動きが政治経済に影響を与えていることを考えると、GDPだけでその国の経済パワーを計るのは危険と言えます。

市場価格との関係は複雑です。家事・育児・介護は・・・

値段(市場価格)がついていないサービス生産の中に、GDP(国内総生産)に含まれるものと、含まれないものがあります。

例えば、市役所職員の窓口業務サービスは、市場価格はついていませんが、GDPには含まれます。

これには、「非市場性サービス生産」という名前がついています。計算に当たっては、そのサービス量を、必要とした費用(人件費など)で価格に換算して、GDPにカウントしています。

一方、主婦の家事・育児・介護といった家庭内労働は、市場価格が付いていないということで、GDPに含まれていません。

しかし、家政婦・ベビーシッター・介護員となって、市場価格がつけば、GDPにカウントされることになります。

もともと、主婦労働のトータルは小さくありませんが、日本ではさらに介護との関係で、重要視されてくると思われます。しかしGDPでは、その多くが抜け落ちているのです。

ここで、北欧諸国のケースを見てみます。国によって差はありますが、男女同権と、家庭のための行政サービスが充実していて、女性が子供を産んだ後も外で働くことがまったく珍しくありません。むしろ、男性より所得が高いことが頻繁にあります。

母親達が非常に高い税金を払う一方、行政サービスが家事の一部、あるいはその多くを担います。

そうしますと、北欧の母親達の多くは、「外で」競争しながら、その生産がGDPにカウントされています。もちろん、高い行政サービスの方も、GDPにカウントされています。

ここは、日本の主婦の皆さんからすれば、「ダブルカウントだ」と言いたいところかもしれません。

つまり、家事・育児・介護といった家庭内労働を、主婦がやらずに、人を雇ったり、高い税金で行政経由にすれば、GDPの数値は大きくなります。それが、GDPです。

北欧諸国の高いGDP、特に「一人当たりGDP」は非常に高いですが、それだけで「豊かなんだ」と考えるのは早計です。

昼夜の人口移動と「一人当たりGDP」

昼の人口が、夜の人口より圧倒的に多い地域や国があります。東京やルクセンブルクがそうです。

昼の人口が、GDP(国内総生産)のほとんどを生み出すのが一般的です。

しかし「一人当たりGDP」を計算する時は、GDPを夜の人口(そのエリアの居住者人口)で割ります。

つまり、東京やルクセンブルクは、「多い昼の人口」でGDPを生み、「少ない夜の人口」でその数値を割るので、「一人当たりGDP」は高くなって当たり前なのです。

昼に労働者が集まるということは、そのエリアの生産性(所得)が高いと考えられます。

しかし、昼の流入が多すぎると、「一人当たりGDP」があまりに高くなりすぎて、生産性を表す指標としてそのまま使うことは出来ません。

逆に周辺エリアの「一人当たりGDP」は、「少ない昼の人口」でGDPを生み、「多い夜の人口」でその数値を割ります。「一人当たりGDP」が低くても、暮らしている人達が低所得者層だとは限りません。

環境問題を考えてはいない

GDPは環境に配慮しません。

例えば、リサイクルの問題です。中古品をバザーなどに出したとしても、その売上代金はGDPにカウントされません。中古品では付加価値を生産していないと見なされるのです。

本来は、誰かの便益になる経済活動をカウントすべきなのですが、中古品では「持ち主が変わっただけ」だとして無視されます。つまり、どんどん新品を作って、どんどん捨てた方が、GDPは上がります。

また、今の中国や昔の日本はさんざん公害に苦しめられるわけですが、生産量計算は公害をマイナスとしてカウントしません。

そればかりか、「公害対策費」という行政サービスは、GDP上「プラス」に計算されてしまいます。

つまり、環境汚染を無視して生産を増やし、同時に公害対策費を国が予算取りしていけば、GDPはダブルで上がっていくことになります。

健康な国を志向するのであれば、「環境汚染を抑えた生産」を標準化し、「公害対策費」を結果的に減らしていかなくてはなりません。

GDPは環境問題を無視していることを念頭にいれておく必要があります。

まとめ

GDP(国内総生産)について誤解を受けそうなところを四点拾ってみました。

  • 海外生産: GDPは、先進国大企業のパワーと直結したものではありません。
  • 市場価値: 北欧諸国のGDPを見る時は、女性の「外」での労働と、行政サービスのダブルカウントがあることを考えます。なお、主婦労働はGDPに含まれません。
  • 人口移動: ルクセンブルクの驚異的に高い「一人当たりGDP」には昼夜の人口移動が関係しています。「一人当たりGDP」=「個人の豊かさ」と考えると周辺国を低所得だと誤解してしまいます。
  • 環境問題: まったく配慮が無いばかりか、中国で公害対策費という行政サービスがGDPを上げています。ここがダブルカウントになっています。

今後も、GDPという数値は頻繁に登場すると思いますが、これらのポイントがお役に立てば幸いです。

終/【用語解説】GDP(国内総生産)が国際経済で誤解される4つのポイント。それって、含む?含まない?

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