2018年、エボラ熱再び。2014年当時の米国を振り返る

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In 2018, Ebola Heat again. Look back on the US in 2014 米国

photo by UNMEER [ CC BY-ND 2.0 ]

2018年、アフリカのコンゴ民主共和国で、再びエボラ出血熱の流行が拡大しています。2018年7月から12月の間に300以上が死亡したと、同国保健省が発表しています。

世界保健機関(WHO)は、過去に何度も緊急事態の終了宣言を出しているのですが、そのたびに裏切られている格好です。東京オリンピックを見据えながら、この感染症から目を離すべきではありません。

過去に最大の流行をみせたのが、2013年から2016年の間で、西アフリカで1万人以上が死亡しています。

このページでは、その大流行のさなか、2014年に、米国で何が起っていたのかを追います。世界で最も医療技術の進んだ国で、どんな失敗やパニックが起こったのか、連邦と州の対立や、大統領選中間選挙への影響などもまとめてみました。

参考:エボラ出血熱とは、1976年にアフリカで見つかったウイルス性感染症です。致死率は諸説ありますか、25~90%程度。感染経路は、主に患者の血液や吐いたものへの接触であると言われています。

西アフリカでエボラ熱の感染拡大

2014.07.31◆CDC(米国疾病対策センター)勧告

CDC(米国疾病対策センター)が、米国在住者に、西アフリア三カ国への渡航を控えるよう勧告しました。

これまでにアフリカで、729人の死亡が確認されていました。

2014.08.02◆アメリカ人医師帰国

リベリアで治療活動中に感染したアメリカ人医師(アメリカ援助機関所属)が特別機で帰国しました。

CDCは、感染患者の米国受入れに否定的な電話が100件以上あったことを明らかにした上で、帰国して治療することへの理解をアメリカ国民に呼びかけました

なおこの患者は、実験的治療薬の投与を受けて回復し、同月中に退院しました。

2014.09.17◆オバマ大統領警告

オバマ大統領が、西アフリカで「制御できなくなりつつある」と指摘しました。

抑え込みに失敗すれば、数十万人の感染者が出て「地球規模の治安上の脅威」になる可能性がある、と警告しました。

テキサス州における経過観察の失敗

2014.09.30◆テキサス州で発症確認

CDC(米国疾病対策センター)は、テキサス州で、エボラ出血熱の発症者が確認されたと発表しました。

リベリアより入国後、4日たってから症状を訴えていました。

2014.10.08◆米国内一人目の死亡者

テキサス州の病院が、上記の男性が死亡したと発表(米国内一人目の死亡者)しました。

2014.10.12◆親族ではなく看護師に感染

CDCは、この男性の治療にかかわった女性看護師の感染を確認したと発表しました。

亡くなった男性と接触のあった親族達が、経過観察下に置かれていました。しかし、親族達に感染は無く、経過観察していなかった病院スタッフへの感染が見つかり、大きく問題視されました。

二人の看護師に感染が確認されましたが、その内の一人が微熱のまま国内を飛行機で移動していました。同じ飛行機に乗っていた児童らの学校は休校措置をとることになりました。

なお、両看護師は10月中に回復しています。

ニューヨークでMSF(国境なき医師団)の医師に陽性反応、連邦と州のくい違い

2014.10.21◆空港限定

アメリカ国土安全保障省が、西アフリカ三カ国からの入国を、ニューヨークを含む五つの空港に限定しました。

2014.10.23◆MSF(国境なき医師団)のアメリカ人医師に陽性反応

ニューヨーク州の知事とニューヨーク市の市長は、ギニアで活動していたMSF(国境なき医師団)のアメリカ人医師に、帰国後エボラ出血熱の陽性反応が出たことを発表しました。

陽性反応確認前、ニューヨークの地下鉄やボーリング場を利用していたことが、報道されました。

なお、この医師は11月に無事退院します。

2014.10.24◆州が「強制隔離」方針

ニューヨーク州とニュージャージー州が、西アフリカで医療活動に従事していた医師・看護師らを一律に病院などに「強制隔離」する方針を発表しました。

その同日、MSF(国境なき医師団)の女性看護師が、ニュージャージー州の空港で帰国後いきなり隔離されました。

3日後解放されますが、非人道的であるとして不満を表明します。

2014.10.26◆連邦が「強制隔離」に難色

オバマ大統領が、両州の方針に難色を示します。

2014.10.27◆国連も「強制隔離」に難色、州が方針変更

国連事務総長も、「科学に基づかない措置を受けさせるべきではない」と批判しました。

両州は結局、自宅での外出禁止に方針を変更しました。

その同じ日、CDC(米国疾病対策センター)が、感染防止策について連邦政府としての統一指針を発表しました。

オバマ民主党の敗北

2014.11.04◆中間選挙で共和党圧勝

アメリカ中間選挙が行われ、両院で共和党が圧勝しました。

民主党敗北の原因としては、外交、経済、福祉政策など、多くが指摘されています。しかし、この時、アメリカ国内がエボラ熱問題で加熱していたことも事実です。

国民の懸念が非常に高かった上に、オバマ大統領の対応が甘いと、連邦と州で方針にずれが生じたりしていました。

2014.11.17◆米国内二人目の死亡者

シエラレオネで医療活動を行っていた医師が、米国内の病院で死亡しました。(二人目の死亡者)

これまでの感染者と異なり、病院到着時、極度に重篤な状態であったと報道されました。

2014.11.21◆国連報告

WHO(世界保健機関)は、エボラ出血熱の感染者が、①8カ国合計で1万5251人に達した、②うち5459人が死亡した、と発表しました。

また、国連事務総長は、国際社会が支援を続ければ、2015年半ばまでに感染を終わらせることができるとの見通しを発表しました。

まとめ

2018年、再び感染が広がるエボラ出血熱について、2014年当時、その拡散に遭遇し、国内の死者まで出た米国の反応をまとめてみました。

エボラ出血熱による、アメリカ国内での死亡者数は、数としては多くありませんでした。しかし、世論は大きく反応しました。

エボラ出血熱は、空気感染しないことが最初から報じられていました。しかし、万全であるはずの米国病院内部での感染が、混乱を呼びました。

この国では、最も良く出来る生徒がメディカルスクール(医師を養成する専門職大学院)に進学することが一つの定番です。病院というものへの信頼や、その社会的地位は、草の根レベルまで高いな、と感じることがよくあります。

一番報道が過熱していた頃の世論調査では、半数、あるいはそれ以上のアメリカ国民が、自分やまわりの人間への感染を懸念していました。

オーストラリアやカナダが、流行国からの渡航者へのビザ発給を一時停止(入国制限)したのに対し、アメリカは、空港を限定したものの、入国そのものは制限しませんでした。

西アフリカ内部で事態を沈静化させるためには、どうしても支援が必要です。このエリアの孤立を避けるために、アメリカが入国制限してはいけないとの判断だったのだと思います。

しかし、アメリカ国内では、オバマ大統領の対応が甘いとする声も強かったようで、複数の州が連邦政府と異なった対応をみせていました。

今回の封じ込めには、アメリカ合衆国の動きが重要であることは言うまでもありません。しかし、アメリカ人は人道的活動に積極的であろうとする一方、自分たちの安全を脅かす存在には、とても敏感に、そして大きく反応する傾向があります。

この時は、被害者の数が拡大しなかったこともあって、うまく抑えた感じもしたのですが、中間選挙のタイミングは、有権者の冷静な判断を得る上で、あまりに悪かったと考えられます。

日本は東京オリンピックを控え、このアメリカの事例を参考としながら、万全の体制が求められています。

終/2018年、エボラ熱再び。2014年当時の米国を振り返る

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