政府機関? アリババ・グループと中国共産党の蜜月関係を振り返る

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Government agency? Looking back on the honey relationship between the Alibaba group and the Chinese Communist Party 中国

photo by JD Lasica [ CC BY 2.0 ]

中国のアリババグループと言えば、何を思い浮かべるでしょうか。

オンライン・ショッピングの巨人ですが、その経済規模は世界最大と呼んでも過言ではありません。

時価総額では米アマゾンを軽く超えており、流通総額でも米ウォルマートを超えて世界一です。

日本の企業とも提携が進み始めており、ホンダとネット接続車を開発したり、パナソニックとスマート家電の研究なども行っています。

また、国際オリンピック委員会(IOC)は、アリババグループが最高位スポンサーに決まったと発表しています。

このアリババグループの創始者が、「共産党員であった」ことが人民日報から発表され、物議をかもしています。このグループが中国共産党とは一線を隔てていると、考えられていたからです。

超巨大企業アリババの歴史と、見え隠れする中国政府(中国共産党)との関係を追いかけてみました。

1999年◆アリババ・ドット・コム誕生

中国浙江省杭州市にアリババ・ドット・コムが誕生しました。後に、この会社が世界最大の企業間電子商取引サイト運営企業となります。

創設の中心人物が馬雲氏(マー・ユン=ジャック・マー、以下マー会長)。マー会長は商人の町杭州市に生まれ、大学入試に2度失敗したあと、杭州師範学院(現・杭州師範大学)に入学します。

卒業後、英語教師をしていましたが、その後、翻訳会社、小売業、中国版イエローページ(中国初のインターネットビジネス情報掲載サイト)など40社近くも起業と失敗を重ねました。

1995年に渡米、帰国後1999年にアリババを設立します。

2000年◆孫正義氏から出資を受ける

国際ビジネスの歴史の中で、人の出会いが世界を大きく揺るがしていくことがあります。2000年代最初の年、ソフトバンク孫会長とアリババのマー会長が出会いました。

マー会長の最初の資金は、850万円たらず。これを使い切り、北京で孫会長に出資を求めて、事業説明を行っていました。わずか6分で孫会長は決断したといいます。朝日新聞)ここで得た出資金、約20億円でアリババが躍進を始めます。

また、同年マー会長は、米国の有力経済紙フォーブスの表紙を飾っています。中国在住の起業家としては初めてのことでした。

2003年◆淘宝(タオバオ)スタート

淘宝(タオバオ)とは、中国の個人向けインターネット通販サイトです。

もともと、アリババは、中小企業同士をインターネットで結びつけてきました。次に、このタオバオで個人同士の取引をネット上で実現させます。これが、アリババグループ躍進の起爆剤となりました。

このころから、「マー会長=庶民のヒーロー」というイメージが広がっていきます。

そもそも、中国で小売業を営む場合、立地の問題で、中国当局を避けては通れません。しかし、アリババは、インターネットを使うことで風穴を開けてきたのです。大企業間より中小企業間の取引、さらに個人間取引と、現代中国の庶民のニーズを現実化していきました。

しかしこれは、中国当局との関係をよほど上手くコントロールしていなければ、実現できないことです。

2004年◆支付宝(アリペイ)スタート

「支付宝(アリペイ)」とは、アリババグループの決済サービスです。

ネット通販サイトで重要なことに、「代金を支払ったのに、品物が届かない」といった不安を払拭することがあげられます。

そこで、アリペイは。消費者から代金をいったん預かり、品物の受け渡しが完了した時点で、出品者(事業者)に支払う仕組みを確立していきます。

アリペイは後に、数億人規模の口座を持ち、利息もつけ始めたため、10兆円を超える預金を獲得していきます。中国の銀行業界から目の敵にされているという話もありますが、既存の金融システムにも、大きな風穴を開けてゆきます。

2005年◆「ヤフー中国」買収

米国の検索大手IT企業「ヤフー」から「ヤフー中国」を買収し、世界にもその存在感をしらしめることになりました。

2014年◆米国で上場、調達2.7兆円、時価総額25兆円

2014年9月19日、アリババグループがニューヨーク証券取引所に上場しました。市場から約2.7兆円を調達。史上最大となりましたが、とんでもない金額です。

企業価値は株式時価総額で表されることがありますが、これが、約25兆円。世界のトヨタが約22兆円ですから、あっさり抜いてしまいました。アメリカのアップルには及びませんが、同業者アマゾンやフェイスブックを軽く上回っています。創業たった15年の会社が、世界を驚愕させることになりました。

なお、米国アマゾンは翌年、中国内でのビジネスの為に、アリババ内に出店することを決めました。アリババの筆頭株主はソフトバンクなのですが、日本でのアマゾン vs ヤフーショッピングの状況と比較すると、アリババグループが中国内でいかに強力かがわかります。

一方、当時から世界の金融緩和、いわゆる「金余り」が、この熱狂的調達劇の背後にあると指摘されていました。マー会長のタイミングの良さが取り上げられると共に、経営の透明性や中国外資規制の問題など、完全に払拭されているとはいえず、アメリカ国内に警戒感があったことも事実です。

2015年◆中国版GPSの為に、中国軍需産業と合弁会社

中国で、スマートフォンの地図サービスを利用しようとすると、米国のGPSを使うことが多いです。

しかし、軍事用には「北斗」と呼ばれる中国版のGPSが存在し、10機以上の人工衛星から位置情報を得ています。

これまで、中国兵器工業集団という軍需産業大手が、この「北斗」を運営していましたが、アリババの豊富な資金力を背景に、GPS以上の精度を目指していくものと考えられます。

2017年◆アリババ買収の香港有力紙、習氏側近親族の疑惑撤回

2015年にアリババは、香港の有力英字紙、サウスチャイナ・モーニングポストを買収しています。

マー会長が中国政府と親密であることから、香港では当時から報道が中国寄りになることが懸念されていました。

2017年、このサウスチャイナ・モーニングポストが、中国の習近平国家主席の側近、栗戦書共産党中央弁公庁主任による「蓄財疑惑」報道を行いました。しかし、その直後、一転して撤回しています。

同紙は、「検証できない内容が含まれていた」と謝罪しました。中国税関は同紙の持ち込みを禁じ、没収措置をとっています。

2018年◆「マー会長は共産党員だった」人民日報が公表

中国共産党の機関紙である人民日報が「改革開放に優れた貢献をした表彰者」として、マー会長を表彰すると同時に、共産党員であったことを公表しました。

まとめ

アリババグループのこれまでを見てきました。

「一人の英語教師が、世界最大の会社を作った」というストーリーは、現代のネットショッピング人気や、国際金融自由化の中で、分からなくもない・・・と言いたいところですが、今一度、このアリババグループ成長の過程を検討してみたいと思います。

ポイントとしては、

  • もともと、日本(ソフトバンク)からの出資が無ければ、躍進はなかった。
  • これまでの中国の商慣習、例えば小売業の立地の問題や銀行の既得権益問題などを、矢継ぎ早にクリアしている。
  • アメリカ市場への上場をもって、世界最大の企業に名を連ねる。
  • 軍事や報道面で中国政府寄りの動きが見え始めている。

こうして見ますと、外国企業を懐に入れず、外資だけを利用して、中国を世界最大のビジネス大国にしようとしているように見受けられます。また、そこで得た豊富な資金を、軍事とメディアに活用していけば、世界史ではお馴染みの「中央集権国家による富国強兵」のイメージも浮かんできます。

中国政府は、随分前から、自国をアメリカと並ぶ超大国にすることを、目標として掲げています。その為には外資が必要なわけですが、「一人の英語教師がIT産業で・・・」というイメージは、スピーティーな調達に大いに役立ったと思われます。

また、「マー会長=庶民のヒーロー」というイメージが、改革開放を妨げる既存の慣習や権益を破壊することに貢献していくことになりました。これは、中国政府自身が行ったのでは、抵抗が大きすぎたのではないかと思われます。

オリンピックの最大スポンサーであり、日本の大企業がこぞって提携し始めているこのアリババグループから、今後も目が離せません。

終/政府機関? アリババ・グループと中国共産党の蜜月関係を振り返る

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