多文化主義の未来は? オーストラリアの人口と移民について考察してみました

オーストラリア
What is the future of multiculturalism? I examined the population and immigration in Australia オーストラリア

日本を含め、世界各地で移民が大きなテーマとなっています。そこで移民大国の一つオーストラリアを取り上げます。

まず人口の特徴から整理し、その後、移民の歴史、そして最近のテーマと簡単にまとめていきます。

なお、多文化主義とはこの国の政策方針です。かつて唱えていた白豪主義に反対し、移住者の多様な文化を認めることが、オーストラリア国民経済と文化の発展に貢献するとの観点で、国を挙げて推進しているとされています。

このページのデータについて、特に注記がない場合、オーストラリアに関しては、 Australian Bureau of Statistics (参照 2015/01/13)、日本に関しては、 総務省統計局 (参照 2015/01/13)の公表数値をもとに、作成しています。

総人口

オーストラリアの総人口は、約2,350万人(2014年6月)です。

日本の総人口を100とすると、18~19の規模です。

日本の人口が多いという見方もあるかもしれませんが、オーストラリアが世界第6位の国土面積を有していることを考えれば、やはり少ないです。

理由としては、次のような点が上げられます。

  • 歴史的に、まだまだオーストラリアが(先住民族をのぞけば)若い国だということ
  • 地理的に、南極の次に乾燥している大陸で、アメリカと比較しても、内陸部を中心に自然環境が人間にやさしいとは言えないということ

5大都市: シドニー、メルボルン、プリスベン、パース、アデレード

人口分布を調べますと、都市部に強い偏りがあります。2011年のデータでは、85%が都市部に住むという状態になっています。しかも、下記の5大都市の比率が相当高いです。

オーストラリア諸都市の人口ランキング
(2013年6月、%は対オーストラリア総人口比) 
シドニー476万人20.6%
メルボルン435万人18.8%
ブリスベン224万人9.7%
パース197万人8.5%
アデレード129万人5.6%

ちなみに、オーストラリアの首都はキャンベラですが、上記の5大都市より人口ははるかに少ないです。

なお、日本の首都の場合、統計局の2012年推計人口をもとにしますと、東京都に、総人口の約10%が、東京圏(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県)に、約28%が住んでいます。

都心集中であることは似ていますが、シドニーとメルボルンで全オーストラリア人口の約40%を占めているということを考えれば、より都市型の人口分布と言えそうです。

移民の全体像

日本と異なり、オーストラリアの人口はかなり増え続けています。最大の増加原因は、自然増では無く、海外からの移民移住です。

全人口の27.7%(2013年6月)の人々がオーストラリア国外で生まれた人たちです。四人に一人以上が「外国」生まれというのは、日本人感覚では、なかなかピンとこないと思いますが、この比率は今も増え続けています。

移住者を国籍別でみますと、イギリス、ニュージーランド、中国、インド、ベトナムなどが中心です。

日本からも、長期滞在を越えて永住する人がかなりいます。日本の統計局の資料によれば、2012年の時点で、アメリカ合衆国、ブラジルに次いで三番目に海外永住者が多いのが、オーストラリアです。

なお、本当の意味でもともとオーストラリアに居住する先住民族(アボリジニとトレス海峡諸島民)の比率は、 Australian Government Department of Foreign Affairs and Trade (参照 2015/01/13)によれば、全人口のおおよそ2.5%(2011年)とされており、極めて少数派であるのが現状です。

移民の歴史を簡単に

オーストラリアの移民の歴史を概観すると、次のようになります。

18世紀:英国から、囚人を中心に入植。それ以降、欧州人中心の移民国家を形成してきました。

19世紀後半: ゴールドラッシュ発生。中国人入植者が大量に増えます。しかし、先に移住していた欧州人の労働機会の喪失から、アジア人排斥運動が起こります。

20世紀初頭: 移民制限法が制定されます。これが、いわゆる「白豪主義」のスタートとなります。白人優遇の人種主義的政策が導入されました。

20世紀後半: 労働力不足から多文化主義へ政策を転換します。技能ビザ取得者とその家族、超富裕層向けの投資ビザに基づく「移民」と、人道的観点からの「難民」に分けて受け入れ枠を設定しました。

移民に関する最近のテーマ

オーストラリアの移民に関する最近のテーマとして、労働力、イスラム教、国連、という三点からまとめてみました。

労働力

オーストラリアはここ20年以上、経済成長を続けていますが、移民の労働と消費が大きいことは言うまでもありません。

しかし、2017年4月、ターンブル首相は「豪州人の仕事が第一だ」として、「英語テスト」などのビザ要件を厳しくしました。移民の受け入れを絞ることが狙いです。

また業界ごとに見極めるという考えも打ち出してもいます。先端技術関係者などは積極的に受け入れたいとのことでしょう。

もちろん、この国が移民受け入れを過剰に制限すれば、国内消費の拡大がストップするわけですから、経済成長に悪影響が出る可能性はあります。

イスラム教

オーストラリアは20世紀後半以降、イスラム教徒の難民を受け入れていますが、同時に、経済的な機会を求めてやってくるイスラム系移民も増加しています。

2016年の国勢調査によると、オーストラリア内のイスラム教徒は60万人。30年前の6倍、10年前の2倍近くに増えています。

トランプ米大統領などが、ブレーキをかけている中、2017年2月、オーストラリアの世論調査で「オーストラリア政府がアメリカ同様にイスラム教の国からの入国を禁じることに賛成か」との調査が行われました。結果は、賛成は41%。反対は46%という状況になりました。

 

国連移民協定

2018年12月10日、国連はモロッコで、移民対策の国際的な枠組み「安全で秩序ある正規移住のグローバル・コンパクト」、通称「国連移民協定」を採択しました。

直前の、2018年8月に就任したオーストラリアのモリソン大統領は、最初からこの協定に署名しない方針を示していました。

協定によって国連から移民政策を押し付けられることを懸念したものと思われます。つまり、自国の状況を第一に移民政策を決めていくということです。

その他の主な協定拒否国は、アメリカ、イスラエル、オーストリア、ポーランド、ハンガリー、チェコ、ブルガリアなどです。

まとめ

オーストラリアは、世界第6位の面積を有しながら、日本の2割程度の人口しかいません。

大きな理由としては、南極の次に乾燥した大陸であることが挙げられます。そこで人口が大都市に集中しています。

移民の歴史を見ますと、英国囚人→欧州系移民→アジア系移民→白豪主義→多文化主義と変遷しています。

現在は、人口も経済も右肩上がりなのですが、その要因として移民を外すことは出来ません。

ただ、その歴史を見ても分かる通り、自国の状況によって、様々な形で移民の流入にブレーキをかける可能性があります。

特に、労働環境と文化衝突がテーマです。

移民が今後も大きなテーマとなってくる中、オーストラリアの政治経済と多文化主義から目が離せません。

終/多文化主義の未来は? オーストラリアの人口と移民について考察してみました

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